イ・ビ・ツなトライアングル (23)

イ・ビ・ツなトライアングル(小説)
01 /27 2012
雨が酷い。さっきまでの遊園地の天気がウソのようだ。

アイツが引っ越す。

と言うことは自動的にタカユキ君争奪戦(私命名)は私の勝ちになるはずだ。

だがそれでいいのだろうか。

そう疑問に思っているからこそ、私はアイツの誘いに乗り、
空き地へと向かっているのだろう。

小走りになりながら空き地に着くと、アイツの姿はあった。

「よく来たな」

芝居がかった声でアイツが挨拶をした。

「ちょっと待って。まず最初に聞きたいんだけど」

「アンタ転校するんでしょ?」

そう言うと、アイツは眉を少し引きつらせたように見えた。

「サヤカから聞いたのか」

「そうよ」

アイツは少し時間を取った後、そうだ、と答えた。

「これでお前とのバカバカしい諍いも終わり、最終決着と言うこと」

「それで結局どうする訳?
 アンタ私がタカユキ君に事情を説明できないからって好き勝手やってきたけど」

「タカユキに言ったって何も変わらんさ」

「タカユキにオレがお前らの事を邪魔してると知れても、
 あの心配性が何かやってるな程度。何も変わらない」

アイツはポツポツとマイペースで話しかけてくる。

「それにしても少し驚いたよ。あっさり根を上げてくれると思ってたのに。
お前の考えって言うのもあながちバカにできないものなのかもしれないな」

当然だ。タナボタの始まりだったが、
今では私だって生半可な気持ちでタカユキ君とつき合っているのではない。

「さて、今日ここに来てもらったのは他でもない。最後に賭けをしないか?」

「賭け?」

「そう、知っての通りオレもあまり時間がないんだ」

そう言うとアイツは説明を始めた。

「賭けの内容はこう。明日昼の12時にオレとお前、両方がタカユキにメールをする。
すぐ来て欲しいと。そしてタカユキが来た方が勝ち。こなかったら負け。
タカユキが彼女と親友のどっちを取るか?
どうだ?簡単だろう」

確かに簡単ではあるが、一体どういった口実で呼び出せばいいのだろうかと考えあぐねていると、

「何、簡単な事さ。今すぐ会いたいとでも言えばいい。理由は後から説明する、で」

「オレが勝利した暁には、お前に手を引いてもらう。
逆にお前が勝ったならオレが諦めるさ」

私は思った。
私たちの意地の張り合いにタカユキ君をとうとう巻き込んでしまう事になると。

「何か不服そうな顔だな」

「まぁ確かにな。オレがいなくなるってもう知っている時点で、
この勝負に乗っかるのはあまり意味がない。
黙ったフリしておけば自動的にタイムイズオーバー、だもんな。
どうする?するかしないかはお前に任せる。ただし、この場で決めてくれ」

「アンタは・・・」

「アンタはどうして私たち、いや、私の邪魔をするの?
 彼女と親友、どっちも居ていいじゃない。相反するものじゃない。私が単に気に入らないだけ?」

そう聞くと、アイツは少し考え込んで、

「独占欲って知ってる?」

と尋ねてきた。

「独占欲?」

「そう、独占欲。誰かを独り占めにしたいという欲求、欲望。
 それに突き動かされてるのかもしれないな。
 でもお前だってオレを非難することはできないはずだ。
 お前だって独占欲から逃れられてる訳じゃないだろ?」

私はタカユキ君を独占したい、と今まで思った事はなかった。
が、これだけアイツのことを嫌だと思っていると言うことは、
やはり独り占めにしたい欲求があるということ・・・
なのだろう。

「さて、どうする?する、しない?」

賭け、か。勝てる自信がない。まず呼びかけるだけでも震えそうになってしまう。
しかも負けた時のリスクが大きい。黙っていればアイツはいつか居なくなる。
それでもいいではないか。

雨音がどんどん激しくなる。止む気配は一向にない。


「どうする?」


つづく
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