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サヨナラ君のさよなら

物語
01 /29 2010
あれは僕が転校する前だから小学校4年の終わりの頃だろうか。
クラスにこんな子がいた。
普段はとても無口でなにも喋らないで教室のはじっこに座っている。
だが、下校の時間になるとみんなに「さよーならっ!」と大きな声を出してニカッと笑うのだ。
その笑顔がとても印象的な笑顔で、彼に「さよーならっ!」と言われた子は
みんな笑って「さよなら」を返していた。

この事から彼は「サヨナラ君」と呼ばれていて、
クラスのみんなから好かれていた。

サヨナラ君に「さよなら」をして家路に着くのが、いつしかクラスの習慣となっていた。

そんなある日の事だ。
放課後、サヨナラ君が何人かのクラスメートにはやし立てられてるのを見た。

「お前サヨナラしか言えないのかよ?」
「・・・・」
「なんとか言ってみろよ」
「・・・・」
「つまんねぇ」
「行こーぜもう」

その日はサヨナラ君はさよならを言わずに急いで帰ってしまった。

僕はなんとなくイヤな気分であった。
イジメのようなものを見たのもそうだが、それを止められなかった事、
サヨナラ君にさよならが言えなかった事も関係していたような気がする。

次の日、サヨナラ君は学校に来なかった。

昨日のちょっとした「事件」が原因ではなく、
住んでいる家から家族ごといなくなった、との事だった。

サヨナラ君が住んでいた場所は町外れの長屋であった。
町の中でも貧しい人たちが住んでいる所であった。

大人の噂話では親が借金を抱えていたから夜逃げをしたという事だった。

サヨナラ君はクラスの誰に「さよなら」を言う事もなく、唐突に消えてしまった。


妙な話だが、今になって思うとサヨナラ君はさよならの意味が分かっていたのだろうか。
サヨナラ君が満面の笑みを浮かべて「さよーならっ!」と言えば、
みんなが笑ってさよならを返してくれる。

サヨナラ君はみんなの笑顔が見たいがためにさよならと言う言葉を
なんとか覚えたのではないのか。そして精一杯の笑顔を見せていたのではないか。


あの日を思い出しながらサヨナラ君に言えなかった「さよなら」をふとつぶやいてみた。
が、それはどこにも届くことなく雑踏の闇の中に消えていった。
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