エヴァンゲリオンとは何だったのか その4 ~リミテッドアニメとしてのエヴァ~

エヴァ総括
01 /13 2010
今回は演出論です。
庵野監督のアニメ演出は日本のTVアニメがリミテッドアニメである事と深く結び付いています。

まずリミテッドアニメには2つの意味がありまして、
①絵が一部だけ動くシーンがあるアニメ(例えば喋っている時は口だけ動くなど)という意味と、
②動画枚数がフルアニメなら1秒あたり24枚のところが、
8枚で製作されているアニメ(つまり3枚は同じコマ)という意味です。

今回リミテッドアニメと言う時は②の意味で使いますので、ご注意ください。

なぜ日本のTVアニメがリミテッドアニメなのかと言いますと、
簡単に言うと予算と時間の都合です。加えて人材難もあるでしょうが、
人もお金も時間も十分に確保できない状況で日本のTVシリーズアニメは作られているので、
その中でできるだけ質の高いアニメを作るために採用された窮余の策です。
(日本では「鉄腕アトム」の時に手塚治虫が採用したらしいです)

リミテッドアニメの経緯はほどほどにしまして、
リミテッドアニメを演出する時に大事なのは「絵を動かさない」ことです。
絵を動かすとどうしても同じコマが3つずつ続くので、
フルアニメに較べてカクカクした動きになります。
アニメーションなのに絵を動かさないことが大事なんて矛盾していますが、
TVアニメでは動かそうとすればするほど質が落ちます。
(時間がない、人がいない、お金がないという三重苦で)

一番不自然に見えるのは映画で言う同一シーンの回し撮りのような手法が一番ダメです。
カクカクするし、作り手としても思ったように動かないし動かせないのでイライラします。

ではどうすればこういったリミテッドアニメのデメリットを克服して、
効果的に絵を見せる事が出来るか。

庵野監督がエヴァで採った演出方法はこの二つです。

①場面転換の多用
②長止め

場面転換で最も有名なシーンはOPでしょう。
OPでは中盤から終盤にかけてものすごい勢いで場面が展開しています。

このように、パッパパッパとシーン転換すればリミテッドである不自然さは全く気にならなくなります。
場面転換するという時にはフルアニメもリミテッドアニメも同じで
違う絵を挿入するので、言ってみればフルアニメとの差がないんですね。

このテンポ良く場面転換を重ねると言った手法が庵野監督は非常に上手く、
エヴァでも効果的に使われています。

エヴァの演出の特徴の一つとして明朝体での文字が挿入されるというのがあります。
あれは場面転換との関連性が深いです。
なぜかというと、場面転換の一つの問題として、
「違う絵になって話の筋が飛んでしまう可能性がある」というのがあります。
つまり、絵→絵と続けて飛んでしまうと読者が見ていて
意味がつながらない場合が出てくると言う事です。
そこで、文字を使って次の絵(場面)を説明することで、意味を繋げるのです。

絵→文字(次の絵の説明)→絵

これで急な場面転換をしても読者が意味が理解できる話になるんですね。
伝聞によると、庵野監督の演出は岡本喜八という映画監督、
文字は市川崑という映画監督から多大な影響を受けているらしいのですが、
(両者の映画は未見なので、真偽はみなさんにお任せします)
要はリミテッドアニメに一番適した演出方法を持った人から庵野監督がもらっているという事です。

次は②の長止めですが、具体的に言うとシンジがカヲルを殺す前のシーンと、
アスカとレイのエレベーターのシーンが印象的です。

絵が動くのを止めるとこれまたフルアニメとリミテッドアニメは同じなんですね。

長く止めるのはバンクシーンと効果が似ています。
TVシリーズの製作は時間との戦いです。
一定のクオリティを維持するためには、
作画枚数を一定数以上増やさない工夫が必要になります。

要は動かない事で時間が稼げると言う事です。
バンクシーンも使い回しでその間の製作を省力しているので、
長止めは効果的に使えれば省力に役立ちます。

この二つの方法によって庵野監督はエヴァの製作をなんとか乗り切ったのです。

今回なぜ演出に触れたかというと、
外部状況が物語世界の内容に干渉すると言うのは当たり前なんですね。
リミテッドアニメという外部状況が演出という作品内容に大きく関わっているのです。

ついでに言うと、スケジュールが押さなかったら(これは外部状況ですよね)、
物語があそこまで内面世界に踏み込む必要もなかった訳で、
(内面世界は戦闘に較べて作画枚数が大幅に少なくて済む、
というか今思い出したら内面世界はバンクシーンも多かったですね)
要は物語は「物語そのもの」で語るのでなく、作り手がどういった状況で作ったのかまで考えないと
作品が見えてこないのではないかと僕は思うのです。
そしてそこを想像しながら作品を語るのが僕の物語に対する鑑賞姿勢だと言う事です。

次はエヴァを作り出した庵野秀明とはどういった人物なのかと言う
僕が一番関心を持った所に入っていきます。
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