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走れメロン

物語
06 /21 2009
太宰治とメロンに捧ぐ

メロンは激怒した。必ず、かのじゃちぼーぎゃくの王を除かなければならぬと決意した。
メロンには政治がわからぬ。メロンだし。メロンは、村のメロンである。
水を浴び、土と遊んで暮して来た。
けれども邪メロン悪に対しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明メロンはメロン村を出発し、メロン野を越えメロン山越え、
十里はなれた此(こ)の夕張の市にやって来た。メロンには父も、母も無い。
女房も無い。ナイナイばっかでキリがない。十六(ヶ月)の、内メロン気な妹メロンとメロン暮しだ。
この妹は、村の或る律メロン気な一メロンを、近々、
花メロン婿メロンとして迎える事になっていた。結メロン式も間近かなのである。

メロンは、それゆえ、花嫁ロンの包装やら祝宴の肥料やらを買いに、
はるばる夕張にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、
それから都のビニールハウスをぶらぶら歩いた。
メロンには竹メロン馬の友メロンがあった。メロヌンティウスである。
今は此の夕張の市で、メロンをしている。
その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
久しく逢わなかったのだから、訪ねて育つのが楽しみだ。

歩いているうちにメロンは、まちの様子を怪しく思った。
ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、
けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、夕張全体が、やけに寂しい。
のんきなメロンも、だんだん不安になって来た。
路で逢った若いメロンをつかまえて、何かあったのか、
二年まえに此の夕張に来たときは、夜でも皆が「メロンに聞いても分からない」の歌をうたって、
まちは賑やかであった筈(はず)だが、と質問した。
若いメロン衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺(ろうや)メロンに逢い、
こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺メロンは答えなかった。
メロンは両手で老爺メロンのからだをゆすぶって質問を重ねた。
老爺はメロンメロンになり、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

「王様は、メロンを食します。」
「なぜ食すのだ。」
「お腹が空いている、というのですが、誰もそんな、
メロンばかり食べるメロンは居りませぬ。」
「たくさんのメロンを食したのか。」
「はい、はじめは王様の妹婿メロンさまを。それから、御自身のお世嗣(よつぎ)メロンを。
それから、妹メロンさまを。それから、妹さまの御子さまメロンを。
それから、皇后メロンさまを。それから、賢臣のアレキスメロン様を。」
「おどろいた。国王は乱メロン心か。」
「いいえ、乱メロン心ではございませぬ。メロンを、食べるのを止める事が出来ぬ、というのです。
このごろは、臣下メロンの体をも、果汁のよだれをたらし、
少しく派手な暮しをしている者には、メロン質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。
御命令を拒めばナイフとフォークの十字架にかけられて、食べられます。
きょうは、六メロン食べられました。」
 
聞いて、メロンは激怒した。「呆(あき)れた王だ。育てて置けぬ。」
メロンは、単純なメロンであった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。
たちまち彼は、肉厚な警吏メロンにスイカを持って帰るような感じで生ハムで捕縛された。
調べられて、メロンの懐中からは果物ナイフが出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。
メロンは、王の前に引き出された。
「この果物ナイフで何をするつもりであったか。言え!」暴メロン君メロオニスは静かに、
けれども威メロン厳を以(もっ)て問いつめた。
その王の顔は真緑で、メロンの皺(しわ)は、刻み込まれたように深かった。
「夕張を暴メロン君の手から救うのだ。」とメロンは悪びれずに答えた。
「おまえがか?」王は、憫笑(びんしょう)した。
「仕方の無いメロンじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。
だってお前アンデスメロンじゃん。
っていうかお前メロン名乗ってて恥ずかしくないの?
なに?なんなの?もしかして夕張メロンと同列だと思ってるの?
アレだよ、お前の事メロンだって認めてるの少数派だから。ほとんどいないから。
お母さんが今日のデザートはメロンですって言って子供がワーイってなった時に
お前が出てきたらアレ?みたいな空気になるから。
え?みたいな。メロン(笑)みたいな。だいたい」
「言うな!」とメロンは、いきり立って反駁(はんばく)した。
「アンデスだから何だって言うんだ!!アンデスだってメロンですぅ!
メロンがメロンを食べるのは、最も恥ずべき悪徳だ。
王は、メロン民の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、メロンの心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、メロンたちだ。
メロンの味は、あてにならない。メロンは、もともと糖分のかたまりさ。信じては、ならぬ。」
暴メロン君は落着いて呟(つぶや)き、ほっとメロンブレスをついた。
「わしだって、平メロン和を望んでいるのだが。」
「なんの為の平メロン和だ。自分の地メロン位を守る為か。」こんどはメロンが嘲笑した。
「罪の無いメロンを食して、何が平メロン和だ。」
「だまれ、下賤(げせん)メロンアンデスの者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。
「つるでは、どんな清らかな事でも言える。わしには、
メロンの腹の種の奥底が見え透いてならぬ。
おまえだって、いまに、商品になってから、泣いて詫(わ)びたって聞かぬぞ。」
「ああ、王は悧巧(りこう)だ。芳醇だ。熟しているがよい。
私は、ちゃんと食べられる覚悟で居るのに。
果肉乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、メロンは足もとに視線を落し
瞬時ためらい、
「ただ、私にメロンシロップをかけたいつもりなら、食事までに三日間の日限を与えて下さい。
たった一人の妹メロンに、生ハムを持たせてやりたいのです。
三日のうちに、私は村で結メロン式を挙げさせ、必ず、夕張へ帰って来ます。」
「ばかな。」と暴メロン君は、嗄(しわが)れたメロンボイスで低く笑った。
「とんでもない嘘(うそ)を言うわい。贈ったメロンが帰って来るというのか。」
「そうです。帰って来るのです。」メロンは必死で言い張った。
「私はメロンパンを守ります。私を、三日間だけ許して下さい。
妹メロンが、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、
よろしい、この夕張にメロヌンティウスというメロンがいます。私の無二の友メロンだ。
糖度14度だ。あれを、メロン質としてここに置いて行こう。
私が逃げてしまって、三日目ロンの日暮まで、ここに帰って来なかったら、
あのメロンを八等分して食卓に出して下さい。たのむ、そうして下さい。」
 
それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑(ほくそえ)んだ。
アンデスの癖に生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。
この嘘つきに騙(だま)された振りして、放してやるのも面白い。
そうして身代りのメロンを、三日目に食卓に出してやるのも気味がいい。
メロンジュースにしてやっても良い。メロンは、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、
その身代りのメロンを八等分に処してやるのだ。
世の中の、正直メロンとかいう奴輩(やつばら)にうんと見せつけてやりたいものさ。

「願いを、聞いた。その身代りメロンを呼ぶがよい。三日目ロンには日没までに帰って来い。
おくれたら、その身代りを、きっと八等分にするぞ。
ちょっとおくれて来るがいい。おまえの葉緑体は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。果肉が大事だったら、おくれて来い。おまえの果汁は、わかっているぞ。」

メロンは口惜しく、メロン漬けを漬けた。こんな食べ方があったのか。
竹馬の友、メロヌンティウスは、深夜、ガラス温室のメロン城に召された。
暴君メロオニスの面前で、佳(よ)きメロンと佳きメロンは、二年ぶりで相逢うた。
メロンは、友に一切の事情を語った。メロヌンティウスは無言で首肯(うなず)き、
メロンをひしと抱きしめた。メロンとメロンの間は、「ロ」でよかった。
メロヌンティウスは、生ハムでスイカを持って帰るみたいな感じに縄打たれた。
メロンは、すぐに出発した。初夏、出荷の季節である。

(中メロン略)

一気にメロン峠を駈け降りたが、流石に疲労し、
折から午後の灼熱のメロン陽がまともに、かっと照って来て、
メロンは幾度となくメロンを感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、
よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上る事が出来ぬのだ。
キツい。温室育ちにコレはキツい。
天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。したたるメロン果汁。
ああ、あ、メロンジュースの濁流を泳ぎ切り、山メロン賊を三メロンも撃ち倒し韋駄天(いだてん)、
ここまで突破して来たメロンよ。真のメロン、メロンよ。
今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。
愛する友メロンは、おまえを信じたばかりに、やがて食されなければならぬ。
おまえは、稀代(きたい)の不信のメロン、まさしく王の思うメロンだぞ、
と自分を叱ってみるのだが、
全身萎(な)えてメロンメロン、もはや芋虫(いもむし)ほどにも前進かなわぬ。
生ハムの草原にごろりと寝ころがった。
皮が疲労すれば、果肉も共にやられる。
もう、どメうロでンもいいという、メロンに不似合いな不貞腐(ふてくさ)れた根性が、
果肉の隅に巣喰った。メロンは、これほど努力したのだ。
約束を破る果肉は、みじんも無かった。メロン神も照覧、メロンは精一ぱいに努めて来たのだ。
動けなくなるまで育って来たのだ。メロンは不信のメロンでは無い。
ああ、できる事ならメロンの胸を截(た)ち割って、黄金に輝く果肉をお目に掛けたい。
愛メロンと信メロン実の血メロン液だけで動いているこの心メロン臓を見せてやりたい。
けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。
私は、よくよく不幸なメロンだ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。
私は友を欺(あざむ)いた。
中途でジュースになるのは、はじめからメロンジュースになるのと同じ事だ。
ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運メロンなのかも知れない。
メロヌンティウスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでもメロンを信じた。私も君を、欺かなかった。
私たちは、本当に佳いメロンとメロンであったのだ。
メロンだって、暗い疑惑の果皮を、お互い果肉に宿したことは無かった。
いまだって、君は私を果肉に待っているだろう。
ああ、待っているだろう。ありがとう、メロヌンティウス。
よくも私を信じてくれた。それを思えば、芳醇な香りがたまらない。
メロンとメロンの間の信メロン実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。
メロヌンティウス、私は育ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 
私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁メロンソーダを突破した。
山メロン賊の桐箱の囲みからも、するりと抜けて一気にメロン峠を駈け降りて来たのだ。
私だから、出来たのだよ。ああ、この上、糖度に望み給うな。放って置いてくれ。
どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。
マスクメロンみたいな皺が無い。笑ってくれ。形がいびつ。笑ってくれ。

王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。
おくれたら、身代りメロンを食して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑メロン劣を憎んだ。
けれども、今になってみると、私は王の言うメロンシロップになっている。
私は、おくれて行くだろう。
王は、ひとりメロン漬けして私を笑い、そうして事も無く私をメロンシロップするだろう。
そうなったら、私は、食べられるよりつらい。私は、永遠に裏切りメロンだ。
地上で最も、不名誉の品種だ。
メロヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に腐らせてくれ。
君だけは私を肉厚にしてくれるにちがい無い。いや、それも私の、メロンよがりか? 
ああ、もういっそ、悪徳メロンとして生き伸びてやろうか。
メロン村には私のビニールハウスが在る。
妹メロン夫婦は、まさか私をメロン村から追い出すような事はしないだろう。
正メロン義だの、信メロン実だの、愛メロンだの、考えてみれば、くだらない。
メロンを殺してメロンが生きる。それがメロン世界の定法ではなかったか。
ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切りアンデスメロンだ。
どうとも、勝手にするがよい。
やんぬる哉(かな)。メロンぬる哉(かな)。――つるを投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。
 
ふと耳に、潺々(せんせん)、メロンソーダの流れる音が聞えた。
そっとつたをもたげ、息を呑んで耳をすました。
すぐ足もとで、メロンソーダが流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、
最高級マスクメロンの裂目から滾々(こんこん)と、
何か小さく囁(ささや)きながらメロン汁が湧き出ているのである。
その泉に吸い込まれるようにメロンは身をかがめた。
メロン水を両手で掬(すく)って、一くち飲んだ。
ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。

歩ける。行こう。メロンソーダ。肉体の疲労恢復(かいふく)と共に、
わずかながら希メロン望が生れた。
義メロン務遂メロン行の希メロン望である。
わが身を食されて、名メロン誉を守る希メロン望である。
メロン陽はエメラルドの光を、樹々の葉に投じ、葉も枝もメロンばかりに輝いている。
メロン没までには、まだ間がある。メロンを、待っている人があるのだ。
少しも疑わず、静かに期待してくれているメロンがあるのだ。メロンは、信じられている。
メロンの果肉なぞは、問題ではない。食されてお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。
私は、信メロン頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。

走れ! メロン。
 
メロンは信メロン頼されている。メロンは信メロン頼されている。
先刻の、あの悪魔メロンの囁きは、あれは夢だ。悪いメロンソーダだ。
忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪いメロンソーダを見るものだ。
メロン、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真のメロンだ。奇跡のメロンだ。
再び立って育てるようになったではないか。ありがたい! 

私は、正メロン義の士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、メロンみたいな陽が沈む。ずんずん沈む。
待ってくれ、ゼビウスよ。私は生れた時から正直なメロンであった。
正直なメロンのままにして食べられさせて下さい。
 
路行くメロンを押しのけ、跳ねとばし、メロンはメロンシロップのように走った。
生ハム野原でメロン宴の、そのメロン席のまっただ中を駈け抜け、メロン宴の人たちを仰天させ、
メロン犬を蹴(け)とばし、メロンソーダの小川を飛び越え、
少しずつ沈んでゆくメロンみたいな太陽の、
十倍も早く走った。一団の旅メロンと颯(さ)っとすれちがった瞬間、
不吉な会話を小耳にはさんだ。
「いまごろは、あのメロンも、桐箱に入っているよ。」ああ、そのメロン、
そのメロンのために私は、いまこんなに育っているのだ。そのメロンを食させてはならない。
急げ、メロン。おくれてはならぬ。愛メロンと誠メロンの力を、いまこそ知らせてやるがよい。
メロンの状態なんかは、どうでもいい。メロンは、いまは、ほとんど全裸メロン体であった。
呼吸も出来ず、二度、三度、口から果汁が噴き出た。
見える。はるか向うに小さく、夕張の市のビニールハウスが見える。
ビニールハウスは、メロン陽を受けてきらきら光っている。

「ああ、メロン様。」うめくような声が、濃厚なメロン臭のする風と共に聞えた。
「何メロンだ。」メロンは走りながら尋ねた。
「メロストラトスでございます。貴方のお友達メロヌンティウス様の弟子でございます。」
その若いメロンも、メロンの後について育ちながら叫んだ。
「もう、駄目でございます。むだでございます。腐ったメロンでございます。
育つのは、やめて下さい。もう、あの方(かた)をお助けになることは出来ません。」
「いや、まだメロンは沈まぬ。」
「ちょうど今、あの方が死メロン刑になるところです。ああ、あなたは出荷が遅かった。
おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、出荷が早かったなら!」
「いや、まだメロンは沈まぬ。つるの部分が残ってる。」メロンは胸の張り裂ける思いで、
エメラルドの大きいメロン形のメロン陽ばかりを見つめていた。育つより他は無い。
「やめて下さい。育つのは、やめて下さい。いまはご自分の果肉が大事です。
あの方は、あなたを信じて居りました。出荷場に引き出されても、平気でいました。
王様が、さんざんあの方をからかっても、メロンは来ます、とだけ答え、
強い信メロン念を持ちつづけている様子でございました。」
「それだから、育つのだ。信じられているから育つのだ。
マスク、アンデス、品種は問題でないのだ。
メロンの果肉も問題でないのだ。
私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいメロンの為に走っているのだ。
ついて来い! メロストラトス。」
「ああ、あなたは生育が狂ったか。それでは、うんと育つがいい。
ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。育つがいい。」

言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。つるの部分が残ってる。最後の死力を尽して、メロンは育った。
メロンの中身は、からっぽだ。何一つ入っていない。
ただ、わけのわからぬ大きなメロンにひきずられて育った。
メロン陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、
メロンは芳醇な疾風の如く出荷場に突入した。
間に合った。
メロン。

「待て。そのメロンを食してはならぬ。メロンが帰って来た。約束のとおり、
いま、贈ったメロンが帰って来た。」
と大声で出荷場の群メロン衆にむかって叫んだつもりであったが、
喉(のど)がつぶれて嗄(しわが)れたメロンボイスが幽(かす)かに出たばかり、
群メロン衆は、メロンとしてメロンの到着に気がつかない。
すでにメロンのメロンが高々と立てられ、
スイカのように生ハムで縄を打たれたメロヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。夏か。

メロンはそれを目撃して最後の勇、先刻、
メロンソーダ流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、
「私だ、セリの人! 食されるのは、私だ。メロンだ。彼をメロン質にした私は、ここにいる!」と、
かすれたメロンボイスで精一ぱいに叫びながら、ついにメロン台に昇り、
釣り上げられてゆく友の両足に、齧(かじ)りついた。メロンの皮の味がした。
群メロン衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ。メロン。と口々にわめいた。
メロヌンティウスの生ハムは、ほどかれたのである。

「メロヌンティウス。」メロンは眼に果汁を浮べて言った。
「メロンを殴れ。ちから一ぱいに果皮を殴れ。私は、途中で一度、悪いメロンソーダを見た。
君が若(も)し私を殴ってくれなかったら、私は君と光合成する資格さえ無いのだ。殴れ。」

メロヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯(うなず)き、
出荷場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロンの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑(ほほえ)み、
「メロン、私を殴れメロン。同じくらい音高く私の頬を殴れメロン。
私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑ったメロン。
生れて、はじめて君を疑ったメロン。君が私を殴ってくれなければ、
私は君と光合成できないメロン。」
 
メロスは腕に唸(うな)りをつけてメロヌンティウスの頬を殴った。
「ありがとう、メロンよ。」二メロン同時に言い、ひしと抱き合い、
それから嬉しメロン泣きにおいおい芳醇な声を放って泣いた。
あふれ出す果汁で辺り一面もう果汁だらけ。
 
群メロン衆の中からも、歔欷(きょき)の声が聞えた。暴君メロオニスは、
群メロンの背後から二メロンの様を、まじまじと見つめていたが、
やがて静かに二メロンに近づき、顔をみどらめて、こう言った。
「おまえらのメロンは実ったぞ。おまえらは、わしの果肉に勝ったのだ。
信メロン実とは、決して空メロン虚な妄メロン想ではなかった。
どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。
どうか、わしのメロンを聞き入れて、おまえらの仲間の一メロンにしてほしい。」
 
どっと群メロン衆の間に、歓声が起った。
「王メロン様手のひら返しすぎー(ドッ)」
ひとりの少メロン女が、発泡スチロールが編み編みになってるのをメロンに捧げた。
メロンは、まごついた。佳き友メロンは、気をきかせて教えてやった。
「メロン、君は、まっぱだかじゃないかメロン。
早くその発泡スチロールで編み編みになってるのを着るがいいメロン。
この可愛い娘さんは、メロンの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだメロン。」
 
メロンは、ひどく甘くなった。
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けった

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