もう一度君のおっぱいを揉みたいんだ

物語
02 /17 2013
冬枯れの街路樹は 寂しさを加速させるね

大雪が降る中 一人でとぼとぼと帰った

君が居た頃は すべてが華やかに見えて

夢中で話をしたね 時間が経つのも忘れて

そんな君の「さよなら」 今も胸に残ったまま

もう一度君のおっぱいを揉みたいんだ

君を抱いて いつまでも眠っていたい

幻でもいいから ペロペロしたいんだ again…

季節は巡って もうすぐ春が来るね

「冬は嫌い」そう言っていた君は 喜んでいるのかな

どこを歩いても 君との思い出が痛くて

目も開けられないぐらい つらいよ

僕の「好き」は 宙に浮かんだまま

もう一度君のおっぱいを揉みたいんだ

僕の願いを 叶えておくれよ

犯罪でもいいから ペロペロしたいんだ again…

(ラップ部分)

ズルズル 引きずる この想い YO!

すべてが勘違い 嫌いなんて聞き違い?

僕はメロメロ 君はヘロヘロ

二人違う日に Hello Hello HO!

ただただ ヤダヤダ 君はそう言って

So 一点だけじゃない 二人のすれ違い

互い 誓い あったあの日にbyebye

(ラップ終わり)

もう一度君のおっぱいを揉みたいんだ

マシュマロのような 柔らかい胸を

変態でもいいから ペロペロしたいんだ once again…
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鵺野蛾太郎が往く

物語
02 /12 2013
(これは架神恭介さんの飛行迷宮学園ダンゲロスのSSです。
すっごく面白いので興味を持った人は是非買おう!)


「貴女が深紅鴉(しんくからす)さんだね?」
正午過ぎ、客がいるのにも関わらず静けさを保ったミルクホール「アシタバ」で、
鵺野蛾太郎(ぬえのがたろう)は白金遠永(しろがねえんと)との
約束を果たそうとしていた。
深紅色のスパンコールを無数に付けた派手なドレスを着た女は
顔だけを鵺野の方に向け、「そうだけど」と短く応えた。
「小生の名は鵺野蛾太郎。ヌガーさんなどと呼ぶ者も居るが、
まぁそれはどうでもいい。今日は貴女にこれを渡しに来たのだよ」
そう言うと纏っていた濃緑色の袴から
ガサゴソと長方形で淡いピンク色の手紙を取り出した。
「ラヴレターだよ、貴女宛の-」

事は数日前に遡る。

「ヌガー、君に頼み事があるんだ」
「貴方から頼み事とは珍しいね。厄介なことかい?」
いや、そう厄介でもないのだが-、そう言いながら白金遠永は一つの手紙を取り出した。
「うちの『転校生』が書いたものなんだが」
鵺野は遠永から手渡された手紙をまじまじと眺めた。
手紙の中央部分には「深紅鴉さんへ」と書かれている。
「それをそこに書いてある名前の女性の元へ届けてもらいたいんだ」
「ふむ・・・」
恋文か-、そう呟くと鵺野はしばし黙り込んだ。
「『SLGの会』の者が書いたのかね?」
「そう。ラブレターなんて君の時代のように前近代的で可笑しいかい?」
「いや、おかしくはない。人の恋路を邪魔するつもりは毛頭無いのでね。
しかし、なぜ小生が渡す必要があるのかね?
本人が直接渡せば良いだけではないかね?」
「それには理由があるんだ。それを受け取る女性の能力に関係していてね」
「相手も『転校生』なのだね」
「ああ。彼女の能力名は『Hello Sadness』。人の心を読み取る能力だ。
ただし幾つかの条件があってね。
一つに、心を読む当事者の手書きの手紙を満遍なく読みおおせる事。
二つに、その手紙を見知らぬ第三者から受け取ること。
この二つがあって始めてその人の心が読めるんだ」
成る程、自分の能力を使って相手の気持ちが本当かどうかを確かめるのか-
「そしてその方法でしか彼女には恋心を伝えられないと言う訳なんだ。
それ以外は彼女が拒絶している」
そこまで聞いて鵺野はふと一つの疑問を感じた。
「見知らぬ第三者と言うなら、貴方が渡しに行っても良いのではないかね?」
それがそうはいかないんだ-、
そう言うと遠永は手元にあるティーカップを持ち上げ、紅茶を啜った。
「実は以前同じ事があってね、彼女とは顔見知りなんだ」
「以前にも同じ事が?」
「ああ。手紙を書いた人物は今回とは違うんだが、同じようなケースに出くわしてね。
その時は俺が渡しに行った。その恋は成就しなかったんだが・・・。
その時に彼女と幾ばくかの話をしてね。どうも彼女に恋心を寄せる男は多いようだ」
恋愛事は滅法苦手だが、手紙を渡すだけならそうたいしたことでもあるまい、
鵺野はそう思った。
「して、彼女はどこに居るのだね?」
「そこが君にこれを頼もうとした理由なんだ。
彼女は決まって正午からミルクホール「アシタバ」の左奥のカウンターに居る。
ミルクホールなら君の十八番だろう。「アシタバ」へ行ったことは?」
「何度か行こうと思った事はあるが、まだそれは達せていないね」
それは丁度良かった、と遠永は言った。
「是非行ってくれたまえ。俺を助けると思って」
助けるとは大げさな、と鵺野は思ったが、それは口には出さなかった。
「分かった。行こう。」
そう応じて鵺野は席を立とうとしたが、思い出したように、
「ちなみに、何か報酬はあるのかね?」
と、遠永に尋ねた。
「報酬は- 美女との素敵なひとときだよ」
遠永は手短に答えた。

「では、小生はこれで」
約束を果たした鵺野蛾太郎が深紅鴉の元を去ろうとした時、深紅は鵺野を引き留めた。
「ちょっと待って。一杯だけでもいいから何か飲んでいかない?
私、手紙を持ってきた人と話すのが数少ない楽しみの一つなの」
鵺野とてミルクホールで時間を過ごすのは苦痛ではない。むしろ日常茶飯事である。
ましてやここは初めて来る有名店「アシタバ」である。
アシタバの内部の本格的な作りは目を細めるような美しさだ。
鵺野蛾太郎は帰る足取りを止めた。
「そういうことなら」
「何か頼む?」
しばしメニューを見て考えていた鵺野蛾太郎であったが、マスターに
「ミルクを。それと砂糖菓子をくれ給え」と注文した。

さきほどから深紅鴉はラブレターをじっと読み込んでいる。
鵺野蛾太郎はそれを横目に見つつ、ミルクを飲み、砂糖菓子をかじっている。
連れてきたクワガタにも砂糖菓子をかじらせていた。
「ふぅ」と深紅が一息を付いた。どうやら読み終わったようだ。
何気なく鵺野は「どうかね?」と尋ねた。
「この人の気持ちは本当ね。文と心が一致しているし、
裏のやましい心も気になるほど感じない」
それはオゥケィと言うことなのかと鵺野が思い始めた時、
「でもダメね。この人とは付き合えないわ」
そう言うと深紅は手紙を自分のポーチに入れた。
「私、分からないの。
どうして無限のような有限の時間を手に入れた存在である
『転校生』が恋をするのかって。
いつか死ぬからその時間まで一緒にいようって言うのなら分かるわ。
でも本当に「いつまでも」一緒なんて怖気が立つと思わない?」
全くだ-、鵺野は心から同感だと思った。
どうして『転校生』にまでなった人物が恋などという些少な事に一喜一憂するのだろうか。
自分の世界を造る事に興味を無くした『転校生』が
気まぐれに起こす与太話に過ぎないのではないだろうか。
「私、もう『転校生』とは恋も愛もしないって決めてるの。するとしたら一般人としたいわ」
さりとて深紅は積極的に世界を行ったり来たりする事もなく、
いつも昼は「アシタバ」で時間を潰している。
「アシタバ」では一般人と出会うことなどないというのに。
「それならば『転校生』とはもう付き合わないと宣言したらいいのではないかね?」
「実はもうしてるの。それでもたまにこうして知らない人が手紙を持ってくるという訳」
「ふむ・・・」
鵺野は、小さく溜息を吐いてから、
「それは」
全く面倒臭いことだね-、と言った。
深紅はまじまじと鵺野を見つめながらこう尋ねた。
「あなたも恋とか愛とかいまだに言ってるの?」
鵺野は自分の話はあまりしたがらない。ましてやコイバナなどは尚更である。
「小生は-、そうだね、小生の友人のクワガタの話になるんだが」
そう言って鵺野は自分の話から逸らした。
「名前を花(ハナ)というんだが、こいつには恋人がいた。
小生と共に最強を目指すために恋人と別れたんだ。
割り切れぬつらい別れだったが、それでも最強を目指す道は捨てられなかった。
それでもこいつが時折漏らすんだ。恋人に会いたいと。
恋とはそういうものなのやもしれないね」
「ふぅん」と漏らすと深紅は飲みかけの紅茶を飲み干した。
鵺野のミルクも丁度底を付いた頃である。
「このあたりが潮時だね。失礼する」
「最後に一つ聞かせて。ヌガーさん、運命の出会いって信じる?」
「小生は信じているよ。このクワガタ達に出会えたのも運命の巡り合わせだ。では失敬」

鵺野蛾太郎は恋は滅法苦手だ。愛もできるかどうか分かりはしない。だが、友情は-
花、清(キヨ)、千(チヨ)、文(フミ)との友情は、本物だと思うから-

己の信じる世界のため、鵺野蛾太郎は今日も往く-

おわり

龍上湖伝説

物語
01 /12 2013
昔、日向国に娘がおりました。
名前を名希(なき)と言いました。

娘は朝起きてはしくしくと泣き、朝ご飯を食べては泣き、
お出かけしては泣き、家に帰っては泣き、お昼ご飯を食べては泣き、
おやつを食べては泣き、晩ご飯を食べては泣き、寝る前に泣いておりました。
とにかく名希は大変な泣き上戸だったのです。

名希の両親はこれを大変に心配し、
名希が泣く度に「おお名希よ、何が悲しくて泣くのか」と尋ねておりました。
名希は「何が悲しいのでもない、ただただ涙が溢れるのだ」と答えては泣いておりました。

ある日、名希の家の前で立派な体躯をした男が倒れておりました。
名希の両親は男を介抱し、食べ物を分け与えました。
すると男は食べ物をがつがつと平らげた後、
「ありがたい、このお礼は必ずする」と述べました。
男は自分の名前が龍男であると告げました。
そこに名希がひっくひっくと泣きながら顔を出しました。
龍男は「娘よ、何が悲しいのか」と問いました。
名希は「何が悲しいのでもない、ただただ涙が溢れるのだ」といつものように答えました。
龍男は「そうか」と応え、「これが効くかもしれない」と胸元から塗り薬を出しました。
「これを眼の下に塗るとよい」と言うと、名希の両眼の下に薬を塗りました。
すると、みるみるうちに名希の涙がとまりました。
名希の両親は「おお、娘の泣いていない姿を見るのも久方ぶりだ。なんとありがたいことか」
と龍男に感謝の意を伝えました。
龍男は「たいしたことではない」と言い、
「しばらくここに身をよさせてもらえないだろうか、家の手伝いはなんでもする」と言いました。
名希の両親はこれを承諾しました。
龍男は名希の家で大いに働きました。

龍男が名希の家になじんだ頃、豊前国との戦が起こりました。
龍男は戦に招集されることとなりました。
「なに、心配はいらない。戦が終わればすぐに戻ってくる」と言い残し、
龍男は戦へ向かいました。

龍男が戦へ向かってから一月、名希の家に使者が訪れました。
使者が言うには、「龍男殿は戦場にて八面六臂の活躍を見せた」
「我が軍が敗勢になった時、龍男殿は最後まで逃げずに戦った」
「龍男殿が我が軍最後の一人になった時、ふいに龍男殿の身体が龍になり、天まで駆け上った」
「空からはいかずちが落ち、豊前の軍は後退していった」
「龍男殿は戻って来ることはなかった」と告げました。

この使者からの報告を受けると、
名希の顔がみるみるうちに紅潮し、目から一粒の涙がこぼれました。
一粒がひとしずくとなり、そのうち声をあげて名希は泣きました。
おいおいと声をあげて泣いているうち、
名希の涙が水位を増し、川のようにあふれ出しました。
名希はそれでもまだ泣き続け、家を飲み込み、村を飲み込みました。
名希の村は湖となりました。

この湖はのちに龍上湖と呼ばれるようになり、
湖周辺の村は日照り、干ばつに困る事がなくなったそうです。

モロッコ経由で甲府へ行こう

物語
01 /21 2011
メンソールのタバコを持って
小さな荷物で
モロッコへ行こう
モロッコへ行こう
大きな船で
僕らは大事な時間を意味もなく削ってた
「なあなあ」のナイフで

苦しみも憎しみも忘れてしまおうよ
スプーン一杯分の幸せをわかちあおう
君が思うほど僕は弱い男じゃないぜ
愛と勇気と絶望をこの両手いっぱいに

赤い夕日を浴びて黒い海を渡ろう
そして遥かなあの自由な聖地へ
ひとりきりもいいだろうふたりだけもいいだろう
猫もつれて行こう好きにやればいい
いつか僕らも大人になり老けてゆく
MAKE YOU FREE 永久に碧く

ボリュームを上げて命の鼓動が
動脈のハイウェイを静かに駆けぬけてゆく・・・

君が望むのならば淫らな夢もいいだろう
掃いて捨てるほどの愛の歌はある
過去は消えないだろう未来もうたがうだろう
それじゃ悲しいだろうやるせないだろう
いつも僕らは汚されて目覚めてゆく
MAKE YOU FREE 永久に碧く

すべて明かします!小説「KAGEROU」の内容

物語
11 /21 2010
どうもこんばんは。
昨日から何かと話題になっている例の有名俳優のアレですが、実は例の出版社に知り合いがいまして、
(以下P社と呼びます)いろいろと内幕を教えてもらいました。
選考委員がP社内部にしかいないのはみなさんご存じかと思うんですが、
P社の中でもこの作品を大賞にするかどうかは相当揉めたらしいです。
というのもP社もこの作品が例の有名俳優の作品である事は、選考途中に気がついたらしいのです。
そこからこれを利用してP社の文学賞に泊付けを行うべきという意見と、
あくまでも文学賞はその作品内容によって精査するべきであり、
有名俳優であるからといってゴリ押しして大賞を与えるべきではないという意見で
真っ二つに別れたそうです。
このように大賞にするか選外にするかで揉めて一時は
奨励賞などで妥結してもいいのではなどの意見もあったのですが、
最終的に一番力を持つグループが半ば無理矢理押し切るような形で大賞が決定したそうです。
その中で最後まで選外にすべきと言っていた役員はP社を辞める事になったそうです。
ここからが本題なんですが、実は僕の知り合いはこの役員と懇意にしていて、
この小説の内容をまるまるもらって読んだそうなんです。
この役員は僕の知り合いに「この内容が表に出たら私の正しさが証明されるはずだ」と宣ったそうです。
これは暗に「表に出せ」と言う指示で、
まぁ役員のP社に対する意趣返しなんですが、
その話を聞いて僕は自分のサイトで流させて欲しいと知り合いに頼みました。
向こうとしてもネットで漏洩させるという考えであったらしく、
しかも一気に目立つように投下するんじゃなくて、
じわじわと浸透させたいという意見でして、僕のサイトのような小さなサイトはその意味で適切でした。
と言う訳で、僕は例の小説を読みました。そして今からみなさんにも全文お見せします。
もしかしたら今後何か大きな力が働いてこのサイトごと消えるかもしれません。
が、これは正義の行使なんです。読んだ人は魚拓を取って頒布してください。
では公開します。









「KAGEROU」

オレ、臼場影郎26歳。独身。
オレは今、ビルの屋上のへりに立って下を見下ろしながら死のうか死ぬまいか悩んでいる。
どうしてこうなったのかを同情を持って理解してもらうためには、
オレの経歴を知ってもらう必要があるだろう。
オレは普通の家庭に生まれ、普通に育った。
特にモノに困るような事も無く、両親はオレが望むモノを買い与えてくれた。
中学生になった時、オレは部活を始めた。サッカー部だ。
1年の時はもっぱら雑用だった。練習中はネットを越えたサッカーボールを取りに行かされていた。
終わったらランニングだ。ほとんどボールを蹴ることなく1年は終わった。
それでもまだ耐えられた。なぜなら同じ1年は似たような境遇のヤツが半分はいたからだ。
練習に加われるのは昔からサッカーをやっていたような連中だった。
2年になるとボールを使った練習に加わる事ができた。
新しく入った1年に先輩風を吹かせる事もできた。
だがすぐに状況は変化した。オレは2年の中でもオレだけまた雑用に戻された。
2年の中でオレだけ1年に混じってボールを取りに行ったり延々とランニングさせられた。
だからオレは腐った。やがて部活に顔を出す回数が減り、幽霊部員になった。
結局そのまま2年に終わりにオレはサッカー部を辞めた。
サッカー部を辞めた後は放課後時間ができた。
オレは家に帰ってネットやゲームやアニメを観て過ごした。
特にハマったのがネトゲだ。徐々にプレイ時間が増え、深夜までする事が多くなった。
酷い時は朝まで徹夜してプレイした。その代わり学校でずっと寝ていた。
するとそれまで普通だった成績が一気に落ちだした。
授業は寝る。起きている時も内容が分からない。だからまた寝る。
完全な悪循環に陥った。だがネトゲは辞められなかった。
オレの成績は順調に落ちていき、最下位近辺をうろつくことになった。
学校の先生に寝ている事を怒られたが、眠いものは眠いのだ。
怒声も耳に入らない勢いでオレは寝ていた。
両親は何も言わなかった。
やがて3年になり、次の進路を決める段になってもオレは昼夜逆転の生活を続けていた。
オレもさすがにマズいとは思っていたのだが、さりとて今の生活パターンを変える事はできなかった。
高校には行きたかったので、今の成績でも行ける通信制の高校を適当に選んだ。
両親は何も言わなかった。
通信制の高校に通い出してすぐにパソコンがぶっ壊れた。
期せずしてオレはネトゲ漬けの生活から抜け出すきっかけを得た。
オレは壊れたパソコンをそのまま押し入れにおしやった。
普通に眠くない状態で高校に通い出した。しばらく通ってオレは愕然とした。

周りのレベルが低すぎるのだ。

どこを見ても普通の高校にすら行けなかった低脳どもばかりだ。
しかもなぁなぁですぐ群れるクズ共だ。
オレはこんな所に来てしまった事を悔やんだ。
そしてもう無性に辞めたくなったのでそのまますぐに辞めた。
両親は何も言わなかった。

高校を辞めた後はまたぽっかりと時間ができた。
もうネトゲに戻る事はなかったが、漠然とした不安が襲ってきた。
このままでいいのだろうか、と。
自分を変えたいと思った。そのためには何が必要か。

勉強だ。

オレは高校を辞めたばかりなのに大学に行く決意をした。
しかもそれは名門でなければならない。そうでなければオレの自尊心は満たされない。

慶応だ。

オレはそう直感した。そして慶応合格のために何をすべきかを調べだした。
そして高校中退のオレは高認に通らないと受験資格を得られないことを知った。
すぐに高認に向けての勉強を始めた。
それから1日10時間は勉強した。
どうもオレには熱中し出すと止まらないクセがあるようだ。
そして半年で高認に合格した。楽勝だった。
このまま楽勝で慶応にも合格できると思った。
そのまま勉強時間をキープしながら、模試を受けた。
慶応、E判定。

オレは愕然とした。あんなに勉強したのに・・・
それからも何度も模試を受けた。E判定、E判定、E判定。
オレは挫けそうになった。

でもオレはあきらめなかった。勉強方法を再度見直し、弱点を分析し徹底的に弱点を勉強した。
最初はいままでよりやたら時間がかかるようになってしまったが、やがて効果は現れた。

慶応、D判定。

一つだが着実に上がった。方向性は間違っていないと確信し、勉強に集中した。
D、D、C、D、C、C、C、D、C、C・・・

最後の直前模試、B判定。合格確率60%。
絶対安全ではないが、合格圏内まで来た。

そして本番。オレは万全の状態で迎えた。
テストも今までになくスラスラと解けた。
試験が終わった時、オレは自分の合格を確信した。

合格発表までは気楽に過ごした。慶應生になってから何をしようか空想した。
サークルに入って、友達ができて、女の子と知り合って、彼女ができて・・・
夢は広がる一方だった。

合格発表はネットで見た。オレの番号はなかった。
なぜだ、全く分からない。とにかく理不尽だと思った。

立ち直るまでにはかなりの時間を労した。
誰かの陰謀ではないのかと思った。
3ヶ月経ち、オレはようやく立ち直り始めた。
次また受かればいいのだ。引きこもっていたが、
予備校に入り、勉強を再開する事にした。
両親は何も言わなかった。

予備校に入ってからはまた同じ事の繰り返しだ。正直オレの集中力は切れていた。
そのうち予備校を休みがちになった。家から出ず、またネトゲをする悪い癖が出始めた。
一人であんなに熱心に勉強できていた日々はなんだったのだろうか、
オレは勉強に対する意欲を失っていた。
そして2回目も落ちた。今度はショックはなかった。
しかし慶応は諦めきれなかった。そのままずるずると予備校生活へ。
3回、4回、5回・・・オレは落ち続けた。ここまで来た以上、引き返す事はできなかった。

そして9回目の春、事件が起こった。

両親が蒸発した。

突然の事だった。どうやら借金を膨大に抱えていたらしい。
困ったのはオレだ。
予備校に通えなくなったのは当然だが、借家からも出て行く事になった。
オレの履歴は26歳で高校中退、職歴なし。
このご時世にどうやって生きていけばいいのだ。
オレは目の前が真っ暗になり、気がつくとビルの屋上のへりに立っていたという訳だ。

お分かりいただけただろうか。
もし中学の時にサッカーを続けていたらオレは普通に進学し、素晴らしい人生が送れていただろう。
もし高校の時に親が学校を辞めるのを止めたら、オレは素晴らしい人生が送れていただろう。
もし最初に慶応に合格したなら、オレは素晴らしい人生が送れていただろう。
もし親が蒸発しなかったら、オレはそのうち素晴らしい人生が送れていただろう。
少なくとも今の生活を続けていく事はできたはずだ。

オレが死ななければならないのは、オレを理解しないふざけた社会とクソ親のせいだ。
オレは何も悪くない。こんなふざけた世界からは消えてやる。オレは間違いなく天国へ行くだろう。
だってオレは正しいのだから-

「やめろ!」

突然後ろから大声が聞こえた。びっくりして後ろを振り返った。
すらっとしてイケメンな男が叫んでいる。

「死ぬのはやめろ!」

男は再び叫んだ。なんなんだコイツは?

「一体お前は誰なんだ?別に人が死のうが生きようが勝手だろうが!」

「オレの名前は、水嶋ヒロ!お前が死ぬのを止めに来た!」
「ハァ?水嶋ヒロ?何様だよお前は!」
「オレはイケメンで高校サッカーで全国大会に行って
慶応ボーイで俳優として成功者で妻は歌手で金持ちで今度文壇デビューする。だから死ぬのはやめろ!」

サッカー?慶応?金持ち??こいつは、オレのifをすべて持っていた。

「お前にオレの何が分かるって言うんだよ・・・
お前みたいな挫折知らずのヤツに何が分かるって言うんだよ!!」
「(くっ、説得が通用しない・・・女ならすぐ言う事聞くのに・・・これだから男は・・・)
 よく考えてみろ!成功しているか、成功していないか、そんな事は関係ない!
 成功してようがいなかろうが、人は必ず死ぬ。絶対にだ!
 なのにどうして死に急ぐ。きちんと生き抜いてから死ねばいいだろう!」
「うるせぇ!お前なんかの言う事なんか誰が聞くか!」
「よく聞いてくれ・・・誰だって死ぬのは怖い、オレだってお前だって。
 現にお前の足は今震えているじゃないか!」
「!?こ、これは・・・」
「オレも死ぬのが怖いんだ・・・死ねばすべてを失ってしまう。
 そう言う意味では、成功者の方が死ぬのは怖いはずだ。オレとお前は同じだ。
 死の前では誰だって平等だ。だから、簡単に死ぬなんて言うな。命を無駄にするな。
 命は、みな等しく輝いているはずだ!」
「・・・分かった」
「分かってくれたか」
「一つだけ要求がある。住める場所と、幾ばくかの金。これを準備しろ。
 そしたら自殺は止めてやる」
「分かった。オレは金持ちだからそれぐらいは用意しよう」

水嶋ヒロと手をつなごうとしたその時だ。突風がオレを襲った。春一番だった。

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飛び降り、一名。死亡確認。
氏名臼場影郎、年齢26歳。
世に絶望しての自死と見られる。まるでKAGEROUのように儚い命だった、と記される。


おわり

どのYESがNOなのか見極める作業

物語
11 /14 2010
ここはいつものパン工場

見極めろ どのYESがNOなのか

止まらないコンベアー 流れてくるYESとNO

見極めろ どのYESがNOなのか

みなの苦笑い 繰り広げられる上っ面の会話

見極めろ どの枕がYESNO枕なのか

ここは社交場 YESはNOでNOはYES

見極めろ 

YES NO YES NO YES NO YES NO

うーん・・・




YES!

ほらそこにはレインボウ

物語
07 /31 2010
明日はきっと良い事あるさ そう言って見上げたら ほらそこにはレインボウ

毎日仕事で人並みに忙しいです 
基本は淡々とですが失敗して怒られる事もあります
反省してまた仕事にとりかかります
理不尽な事もそりゃあります
そんなこんなで少々落ち気味な日々です

でも

明日はきっと良い事あるさ そう言って見上げたら ほらそこにはレインボウ

毎日があっという間に過ぎていきます
振り返るのも精一杯だったりします
満足してる部分もあります
でも不満足な部分もやっぱりあります
そんなこんなで戸惑う毎日です

でも

明日はきっと良い事あるさ そう言って見上げたら ほらそこにはレインボウ

とても綺麗なレインボウ


何の取り柄もなかったが そんなあいつが好きだった

物語
07 /21 2010
ぶきっちょなクセにやりたがり
物を壊して怒られた

「だって しょうがないじゃない」口をとがらせ すねていた

そんなあいつに頼み事 カレーの具材のお買い物
カレイの煮付けを買ってきて みんなに呆れられていた

「だって そんなのできないよ」口をとがらせ すねていた

何の取り柄もなかったが そんなあいつが好きだった

そんなあいつが歌うたう
調子っぱずれの歌声で 程よくみんなに笑われた

「だって ヘタでも好きなんだ」口をとらがせ すねていた

ある日あいつはこういった「ボクには夢があるんだ」と
「夢を叶えに行くんだ」と小さな田舎を飛び出して
もう幾とせになるだろう あいつを見かけなくなって

何の取り柄もなかったが そんなあいつが好きだった
何の取り柄もなかったが そんなあいつが好きだった

梅雨だし

物語
07 /13 2010
五月雨セプテンバー



今日の雨は僕に冷たい

五月雨なのにセプテンバー 少し哀しいセプテンバー

今日も雨 明日も雨 明後日も雨
降り止まない雨の中 僕はどこへ行くんだろう?
ここに紫陽花が咲いている 赤青黄色 綺麗だね

いつもは好きなメロンパン なんだか食べる気がしない

五月雨なのにセプテンバー 少し哀しいセプテンバー

誕生月のセプテンバー

サヨナラ君のさよなら

物語
01 /29 2010
あれは僕が転校する前だから小学校4年の終わりの頃だろうか。
クラスにこんな子がいた。
普段はとても無口でなにも喋らないで教室のはじっこに座っている。
だが、下校の時間になるとみんなに「さよーならっ!」と大きな声を出してニカッと笑うのだ。
その笑顔がとても印象的な笑顔で、彼に「さよーならっ!」と言われた子は
みんな笑って「さよなら」を返していた。

この事から彼は「サヨナラ君」と呼ばれていて、
クラスのみんなから好かれていた。

サヨナラ君に「さよなら」をして家路に着くのが、いつしかクラスの習慣となっていた。

そんなある日の事だ。
放課後、サヨナラ君が何人かのクラスメートにはやし立てられてるのを見た。

「お前サヨナラしか言えないのかよ?」
「・・・・」
「なんとか言ってみろよ」
「・・・・」
「つまんねぇ」
「行こーぜもう」

その日はサヨナラ君はさよならを言わずに急いで帰ってしまった。

僕はなんとなくイヤな気分であった。
イジメのようなものを見たのもそうだが、それを止められなかった事、
サヨナラ君にさよならが言えなかった事も関係していたような気がする。

次の日、サヨナラ君は学校に来なかった。

昨日のちょっとした「事件」が原因ではなく、
住んでいる家から家族ごといなくなった、との事だった。

サヨナラ君が住んでいた場所は町外れの長屋であった。
町の中でも貧しい人たちが住んでいる所であった。

大人の噂話では親が借金を抱えていたから夜逃げをしたという事だった。

サヨナラ君はクラスの誰に「さよなら」を言う事もなく、唐突に消えてしまった。


妙な話だが、今になって思うとサヨナラ君はさよならの意味が分かっていたのだろうか。
サヨナラ君が満面の笑みを浮かべて「さよーならっ!」と言えば、
みんなが笑ってさよならを返してくれる。

サヨナラ君はみんなの笑顔が見たいがためにさよならと言う言葉を
なんとか覚えたのではないのか。そして精一杯の笑顔を見せていたのではないか。


あの日を思い出しながらサヨナラ君に言えなかった「さよなら」をふとつぶやいてみた。
が、それはどこにも届くことなく雑踏の闇の中に消えていった。

2009 12/2 (水)

物語
12 /02 2009
ヘイ!マイネームイズけった!

アイアムアヒップホッパー 茂み飛ぶグラスホッパー
おれのライム 避けるヤツ皆無
おれのディス まるでフェス 胸躍る 舞い散るドル

かがみさん受賞 一方でオレの更新苦笑
胸刺さるかがみのリリック なにかあるのトリック?どこに離陸

このゲームブック 手間省く それムリ
解けないパズル 答え見るのはズル
手が届かないのなら これ使えノズル
ズルズルと先延ばし 全クリは先の話

求められる努力 答えられない無力 感じ カンチ 東京ラブストーリー
ストーリー通りに行かないヒストリー素通り
ストリートにたむろ むしろ針のムシロ

後ろ見てもしゃーない 読み進め社内で
すべて解けたらパーフェクト 求められるそのファクト

イッエーイ!センキュー!!

えー、という訳でかがみさんとJonyさんのパスを受けてますので、
『完全HIPHOPマニュアル』のダンジョン・アンド・ヒップホッパーズの
全クリを今から目指したいと思います。
あとまだ本書を読んでないんですけど、ラップはなぜか出来ました。
きっと読み終わったらもっと凄いライムが書けると思うので、
使用後のけったさんに期待してください!

ではでは~

走れメロン

物語
06 /21 2009
太宰治とメロンに捧ぐ

メロンは激怒した。必ず、かのじゃちぼーぎゃくの王を除かなければならぬと決意した。
メロンには政治がわからぬ。メロンだし。メロンは、村のメロンである。
水を浴び、土と遊んで暮して来た。
けれども邪メロン悪に対しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明メロンはメロン村を出発し、メロン野を越えメロン山越え、
十里はなれた此(こ)の夕張の市にやって来た。メロンには父も、母も無い。
女房も無い。ナイナイばっかでキリがない。十六(ヶ月)の、内メロン気な妹メロンとメロン暮しだ。
この妹は、村の或る律メロン気な一メロンを、近々、
花メロン婿メロンとして迎える事になっていた。結メロン式も間近かなのである。

メロンは、それゆえ、花嫁ロンの包装やら祝宴の肥料やらを買いに、
はるばる夕張にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、
それから都のビニールハウスをぶらぶら歩いた。
メロンには竹メロン馬の友メロンがあった。メロヌンティウスである。
今は此の夕張の市で、メロンをしている。
その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
久しく逢わなかったのだから、訪ねて育つのが楽しみだ。

歩いているうちにメロンは、まちの様子を怪しく思った。
ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、
けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、夕張全体が、やけに寂しい。
のんきなメロンも、だんだん不安になって来た。
路で逢った若いメロンをつかまえて、何かあったのか、
二年まえに此の夕張に来たときは、夜でも皆が「メロンに聞いても分からない」の歌をうたって、
まちは賑やかであった筈(はず)だが、と質問した。
若いメロン衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺(ろうや)メロンに逢い、
こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺メロンは答えなかった。
メロンは両手で老爺メロンのからだをゆすぶって質問を重ねた。
老爺はメロンメロンになり、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

「王様は、メロンを食します。」
「なぜ食すのだ。」
「お腹が空いている、というのですが、誰もそんな、
メロンばかり食べるメロンは居りませぬ。」
「たくさんのメロンを食したのか。」
「はい、はじめは王様の妹婿メロンさまを。それから、御自身のお世嗣(よつぎ)メロンを。
それから、妹メロンさまを。それから、妹さまの御子さまメロンを。
それから、皇后メロンさまを。それから、賢臣のアレキスメロン様を。」
「おどろいた。国王は乱メロン心か。」
「いいえ、乱メロン心ではございませぬ。メロンを、食べるのを止める事が出来ぬ、というのです。
このごろは、臣下メロンの体をも、果汁のよだれをたらし、
少しく派手な暮しをしている者には、メロン質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。
御命令を拒めばナイフとフォークの十字架にかけられて、食べられます。
きょうは、六メロン食べられました。」
 
聞いて、メロンは激怒した。「呆(あき)れた王だ。育てて置けぬ。」
メロンは、単純なメロンであった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。
たちまち彼は、肉厚な警吏メロンにスイカを持って帰るような感じで生ハムで捕縛された。
調べられて、メロンの懐中からは果物ナイフが出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。
メロンは、王の前に引き出された。
「この果物ナイフで何をするつもりであったか。言え!」暴メロン君メロオニスは静かに、
けれども威メロン厳を以(もっ)て問いつめた。
その王の顔は真緑で、メロンの皺(しわ)は、刻み込まれたように深かった。
「夕張を暴メロン君の手から救うのだ。」とメロンは悪びれずに答えた。
「おまえがか?」王は、憫笑(びんしょう)した。
「仕方の無いメロンじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。
だってお前アンデスメロンじゃん。
っていうかお前メロン名乗ってて恥ずかしくないの?
なに?なんなの?もしかして夕張メロンと同列だと思ってるの?
アレだよ、お前の事メロンだって認めてるの少数派だから。ほとんどいないから。
お母さんが今日のデザートはメロンですって言って子供がワーイってなった時に
お前が出てきたらアレ?みたいな空気になるから。
え?みたいな。メロン(笑)みたいな。だいたい」
「言うな!」とメロンは、いきり立って反駁(はんばく)した。
「アンデスだから何だって言うんだ!!アンデスだってメロンですぅ!
メロンがメロンを食べるのは、最も恥ずべき悪徳だ。
王は、メロン民の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、メロンの心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、メロンたちだ。
メロンの味は、あてにならない。メロンは、もともと糖分のかたまりさ。信じては、ならぬ。」
暴メロン君は落着いて呟(つぶや)き、ほっとメロンブレスをついた。
「わしだって、平メロン和を望んでいるのだが。」
「なんの為の平メロン和だ。自分の地メロン位を守る為か。」こんどはメロンが嘲笑した。
「罪の無いメロンを食して、何が平メロン和だ。」
「だまれ、下賤(げせん)メロンアンデスの者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。
「つるでは、どんな清らかな事でも言える。わしには、
メロンの腹の種の奥底が見え透いてならぬ。
おまえだって、いまに、商品になってから、泣いて詫(わ)びたって聞かぬぞ。」
「ああ、王は悧巧(りこう)だ。芳醇だ。熟しているがよい。
私は、ちゃんと食べられる覚悟で居るのに。
果肉乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、メロンは足もとに視線を落し
瞬時ためらい、
「ただ、私にメロンシロップをかけたいつもりなら、食事までに三日間の日限を与えて下さい。
たった一人の妹メロンに、生ハムを持たせてやりたいのです。
三日のうちに、私は村で結メロン式を挙げさせ、必ず、夕張へ帰って来ます。」
「ばかな。」と暴メロン君は、嗄(しわが)れたメロンボイスで低く笑った。
「とんでもない嘘(うそ)を言うわい。贈ったメロンが帰って来るというのか。」
「そうです。帰って来るのです。」メロンは必死で言い張った。
「私はメロンパンを守ります。私を、三日間だけ許して下さい。
妹メロンが、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、
よろしい、この夕張にメロヌンティウスというメロンがいます。私の無二の友メロンだ。
糖度14度だ。あれを、メロン質としてここに置いて行こう。
私が逃げてしまって、三日目ロンの日暮まで、ここに帰って来なかったら、
あのメロンを八等分して食卓に出して下さい。たのむ、そうして下さい。」
 
それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑(ほくそえ)んだ。
アンデスの癖に生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。
この嘘つきに騙(だま)された振りして、放してやるのも面白い。
そうして身代りのメロンを、三日目に食卓に出してやるのも気味がいい。
メロンジュースにしてやっても良い。メロンは、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、
その身代りのメロンを八等分に処してやるのだ。
世の中の、正直メロンとかいう奴輩(やつばら)にうんと見せつけてやりたいものさ。

「願いを、聞いた。その身代りメロンを呼ぶがよい。三日目ロンには日没までに帰って来い。
おくれたら、その身代りを、きっと八等分にするぞ。
ちょっとおくれて来るがいい。おまえの葉緑体は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。果肉が大事だったら、おくれて来い。おまえの果汁は、わかっているぞ。」

メロンは口惜しく、メロン漬けを漬けた。こんな食べ方があったのか。
竹馬の友、メロヌンティウスは、深夜、ガラス温室のメロン城に召された。
暴君メロオニスの面前で、佳(よ)きメロンと佳きメロンは、二年ぶりで相逢うた。
メロンは、友に一切の事情を語った。メロヌンティウスは無言で首肯(うなず)き、
メロンをひしと抱きしめた。メロンとメロンの間は、「ロ」でよかった。
メロヌンティウスは、生ハムでスイカを持って帰るみたいな感じに縄打たれた。
メロンは、すぐに出発した。初夏、出荷の季節である。

(中メロン略)

一気にメロン峠を駈け降りたが、流石に疲労し、
折から午後の灼熱のメロン陽がまともに、かっと照って来て、
メロンは幾度となくメロンを感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、
よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上る事が出来ぬのだ。
キツい。温室育ちにコレはキツい。
天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。したたるメロン果汁。
ああ、あ、メロンジュースの濁流を泳ぎ切り、山メロン賊を三メロンも撃ち倒し韋駄天(いだてん)、
ここまで突破して来たメロンよ。真のメロン、メロンよ。
今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。
愛する友メロンは、おまえを信じたばかりに、やがて食されなければならぬ。
おまえは、稀代(きたい)の不信のメロン、まさしく王の思うメロンだぞ、
と自分を叱ってみるのだが、
全身萎(な)えてメロンメロン、もはや芋虫(いもむし)ほどにも前進かなわぬ。
生ハムの草原にごろりと寝ころがった。
皮が疲労すれば、果肉も共にやられる。
もう、どメうロでンもいいという、メロンに不似合いな不貞腐(ふてくさ)れた根性が、
果肉の隅に巣喰った。メロンは、これほど努力したのだ。
約束を破る果肉は、みじんも無かった。メロン神も照覧、メロンは精一ぱいに努めて来たのだ。
動けなくなるまで育って来たのだ。メロンは不信のメロンでは無い。
ああ、できる事ならメロンの胸を截(た)ち割って、黄金に輝く果肉をお目に掛けたい。
愛メロンと信メロン実の血メロン液だけで動いているこの心メロン臓を見せてやりたい。
けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。
私は、よくよく不幸なメロンだ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。
私は友を欺(あざむ)いた。
中途でジュースになるのは、はじめからメロンジュースになるのと同じ事だ。
ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運メロンなのかも知れない。
メロヌンティウスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでもメロンを信じた。私も君を、欺かなかった。
私たちは、本当に佳いメロンとメロンであったのだ。
メロンだって、暗い疑惑の果皮を、お互い果肉に宿したことは無かった。
いまだって、君は私を果肉に待っているだろう。
ああ、待っているだろう。ありがとう、メロヌンティウス。
よくも私を信じてくれた。それを思えば、芳醇な香りがたまらない。
メロンとメロンの間の信メロン実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。
メロヌンティウス、私は育ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 
私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁メロンソーダを突破した。
山メロン賊の桐箱の囲みからも、するりと抜けて一気にメロン峠を駈け降りて来たのだ。
私だから、出来たのだよ。ああ、この上、糖度に望み給うな。放って置いてくれ。
どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。
マスクメロンみたいな皺が無い。笑ってくれ。形がいびつ。笑ってくれ。

王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。
おくれたら、身代りメロンを食して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑メロン劣を憎んだ。
けれども、今になってみると、私は王の言うメロンシロップになっている。
私は、おくれて行くだろう。
王は、ひとりメロン漬けして私を笑い、そうして事も無く私をメロンシロップするだろう。
そうなったら、私は、食べられるよりつらい。私は、永遠に裏切りメロンだ。
地上で最も、不名誉の品種だ。
メロヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に腐らせてくれ。
君だけは私を肉厚にしてくれるにちがい無い。いや、それも私の、メロンよがりか? 
ああ、もういっそ、悪徳メロンとして生き伸びてやろうか。
メロン村には私のビニールハウスが在る。
妹メロン夫婦は、まさか私をメロン村から追い出すような事はしないだろう。
正メロン義だの、信メロン実だの、愛メロンだの、考えてみれば、くだらない。
メロンを殺してメロンが生きる。それがメロン世界の定法ではなかったか。
ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切りアンデスメロンだ。
どうとも、勝手にするがよい。
やんぬる哉(かな)。メロンぬる哉(かな)。――つるを投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。
 
ふと耳に、潺々(せんせん)、メロンソーダの流れる音が聞えた。
そっとつたをもたげ、息を呑んで耳をすました。
すぐ足もとで、メロンソーダが流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、
最高級マスクメロンの裂目から滾々(こんこん)と、
何か小さく囁(ささや)きながらメロン汁が湧き出ているのである。
その泉に吸い込まれるようにメロンは身をかがめた。
メロン水を両手で掬(すく)って、一くち飲んだ。
ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。

歩ける。行こう。メロンソーダ。肉体の疲労恢復(かいふく)と共に、
わずかながら希メロン望が生れた。
義メロン務遂メロン行の希メロン望である。
わが身を食されて、名メロン誉を守る希メロン望である。
メロン陽はエメラルドの光を、樹々の葉に投じ、葉も枝もメロンばかりに輝いている。
メロン没までには、まだ間がある。メロンを、待っている人があるのだ。
少しも疑わず、静かに期待してくれているメロンがあるのだ。メロンは、信じられている。
メロンの果肉なぞは、問題ではない。食されてお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。
私は、信メロン頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。

走れ! メロン。
 
メロンは信メロン頼されている。メロンは信メロン頼されている。
先刻の、あの悪魔メロンの囁きは、あれは夢だ。悪いメロンソーダだ。
忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪いメロンソーダを見るものだ。
メロン、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真のメロンだ。奇跡のメロンだ。
再び立って育てるようになったではないか。ありがたい! 

私は、正メロン義の士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、メロンみたいな陽が沈む。ずんずん沈む。
待ってくれ、ゼビウスよ。私は生れた時から正直なメロンであった。
正直なメロンのままにして食べられさせて下さい。
 
路行くメロンを押しのけ、跳ねとばし、メロンはメロンシロップのように走った。
生ハム野原でメロン宴の、そのメロン席のまっただ中を駈け抜け、メロン宴の人たちを仰天させ、
メロン犬を蹴(け)とばし、メロンソーダの小川を飛び越え、
少しずつ沈んでゆくメロンみたいな太陽の、
十倍も早く走った。一団の旅メロンと颯(さ)っとすれちがった瞬間、
不吉な会話を小耳にはさんだ。
「いまごろは、あのメロンも、桐箱に入っているよ。」ああ、そのメロン、
そのメロンのために私は、いまこんなに育っているのだ。そのメロンを食させてはならない。
急げ、メロン。おくれてはならぬ。愛メロンと誠メロンの力を、いまこそ知らせてやるがよい。
メロンの状態なんかは、どうでもいい。メロンは、いまは、ほとんど全裸メロン体であった。
呼吸も出来ず、二度、三度、口から果汁が噴き出た。
見える。はるか向うに小さく、夕張の市のビニールハウスが見える。
ビニールハウスは、メロン陽を受けてきらきら光っている。

「ああ、メロン様。」うめくような声が、濃厚なメロン臭のする風と共に聞えた。
「何メロンだ。」メロンは走りながら尋ねた。
「メロストラトスでございます。貴方のお友達メロヌンティウス様の弟子でございます。」
その若いメロンも、メロンの後について育ちながら叫んだ。
「もう、駄目でございます。むだでございます。腐ったメロンでございます。
育つのは、やめて下さい。もう、あの方(かた)をお助けになることは出来ません。」
「いや、まだメロンは沈まぬ。」
「ちょうど今、あの方が死メロン刑になるところです。ああ、あなたは出荷が遅かった。
おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、出荷が早かったなら!」
「いや、まだメロンは沈まぬ。つるの部分が残ってる。」メロンは胸の張り裂ける思いで、
エメラルドの大きいメロン形のメロン陽ばかりを見つめていた。育つより他は無い。
「やめて下さい。育つのは、やめて下さい。いまはご自分の果肉が大事です。
あの方は、あなたを信じて居りました。出荷場に引き出されても、平気でいました。
王様が、さんざんあの方をからかっても、メロンは来ます、とだけ答え、
強い信メロン念を持ちつづけている様子でございました。」
「それだから、育つのだ。信じられているから育つのだ。
マスク、アンデス、品種は問題でないのだ。
メロンの果肉も問題でないのだ。
私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいメロンの為に走っているのだ。
ついて来い! メロストラトス。」
「ああ、あなたは生育が狂ったか。それでは、うんと育つがいい。
ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。育つがいい。」

言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。つるの部分が残ってる。最後の死力を尽して、メロンは育った。
メロンの中身は、からっぽだ。何一つ入っていない。
ただ、わけのわからぬ大きなメロンにひきずられて育った。
メロン陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、
メロンは芳醇な疾風の如く出荷場に突入した。
間に合った。
メロン。

「待て。そのメロンを食してはならぬ。メロンが帰って来た。約束のとおり、
いま、贈ったメロンが帰って来た。」
と大声で出荷場の群メロン衆にむかって叫んだつもりであったが、
喉(のど)がつぶれて嗄(しわが)れたメロンボイスが幽(かす)かに出たばかり、
群メロン衆は、メロンとしてメロンの到着に気がつかない。
すでにメロンのメロンが高々と立てられ、
スイカのように生ハムで縄を打たれたメロヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。夏か。

メロンはそれを目撃して最後の勇、先刻、
メロンソーダ流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、
「私だ、セリの人! 食されるのは、私だ。メロンだ。彼をメロン質にした私は、ここにいる!」と、
かすれたメロンボイスで精一ぱいに叫びながら、ついにメロン台に昇り、
釣り上げられてゆく友の両足に、齧(かじ)りついた。メロンの皮の味がした。
群メロン衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ。メロン。と口々にわめいた。
メロヌンティウスの生ハムは、ほどかれたのである。

「メロヌンティウス。」メロンは眼に果汁を浮べて言った。
「メロンを殴れ。ちから一ぱいに果皮を殴れ。私は、途中で一度、悪いメロンソーダを見た。
君が若(も)し私を殴ってくれなかったら、私は君と光合成する資格さえ無いのだ。殴れ。」

メロヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯(うなず)き、
出荷場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロンの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑(ほほえ)み、
「メロン、私を殴れメロン。同じくらい音高く私の頬を殴れメロン。
私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑ったメロン。
生れて、はじめて君を疑ったメロン。君が私を殴ってくれなければ、
私は君と光合成できないメロン。」
 
メロスは腕に唸(うな)りをつけてメロヌンティウスの頬を殴った。
「ありがとう、メロンよ。」二メロン同時に言い、ひしと抱き合い、
それから嬉しメロン泣きにおいおい芳醇な声を放って泣いた。
あふれ出す果汁で辺り一面もう果汁だらけ。
 
群メロン衆の中からも、歔欷(きょき)の声が聞えた。暴君メロオニスは、
群メロンの背後から二メロンの様を、まじまじと見つめていたが、
やがて静かに二メロンに近づき、顔をみどらめて、こう言った。
「おまえらのメロンは実ったぞ。おまえらは、わしの果肉に勝ったのだ。
信メロン実とは、決して空メロン虚な妄メロン想ではなかった。
どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。
どうか、わしのメロンを聞き入れて、おまえらの仲間の一メロンにしてほしい。」
 
どっと群メロン衆の間に、歓声が起った。
「王メロン様手のひら返しすぎー(ドッ)」
ひとりの少メロン女が、発泡スチロールが編み編みになってるのをメロンに捧げた。
メロンは、まごついた。佳き友メロンは、気をきかせて教えてやった。
「メロン、君は、まっぱだかじゃないかメロン。
早くその発泡スチロールで編み編みになってるのを着るがいいメロン。
この可愛い娘さんは、メロンの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだメロン。」
 
メロンは、ひどく甘くなった。

雪だるまの恋(3)

物語
03 /12 2009
それから雪だるまの気持ちは天気に左右された。
太陽が隠れているときは、体が溶ける事もなく楽観的な気持ちでいられた。
もしかしたらこのまま消えていなくならずに済むのではないのかと思った。
だが着実に季節は移り変わろうとしていた。
雪だるまの体は少しずつ、溶けていった。

そんな中、女の子は姿を見せなくなっていた。

冬の終わりが近づき春が見えてきた頃、
もう雪だるまは原形を留めてはいなかった。
雪だるまは自分が消えてしまう事、そしてそれが遠くない事を悟った。

太陽が見えているときに、雪だるまは太陽に尋ねた。

「なんとかして、桜というものだけでも見られないでしょうか?
それはそれは美しいものだと教わりました。消えてなくなるとしても、
最後に一目だけでも見たいのです」

太陽は、何も答えなかった。
もはや雪だるまには、失望する余裕もなかった。

少しずつ消えかかる意識の中、ふいに雪だるまは少女の姿を見た。
幻影か?一瞬そう思ったが、そこには確かに少女が立っていた。
私がまだ残っているかどうか、確かめに来たのだろうか。

少女は持っていたものをこちらに見せた。
少女の持っていたお絵かき帳にはクレヨンで桜が描かれていた。
不器用に塗りつぶされた幹、そしてピンクの桜の花。

「それが桜というものの絵だよ」
太陽がそっと教えてくれた。

少女が来てしばらくした後、雪だるまの居た場所には水たまりだけが残った。

その後、本格的に春が訪れ、雪だるまのいた場所は桜が咲き乱れた。
辺り一面ピンク色の春景色。
が、その景色が少女の描いた桜よりも美しかったかどうかは、
今となっては雪だるまにしか分からない事である

終わり

雪だるまの恋(2)

物語
03 /08 2009
少女は雪だるまに一緒に桜を見ようと言った。
雪だるまは声には出せなかったが、心の中で約束した。



その日は今までの曇りがウソのように晴れ渡った。

雪だるまは空にある眩しいものの存在を初めて知った。

その時、雪だるまの鼻に風に乗って枯れ葉が付いた。
それがなかなか取れないで困っていると
どこからかクスクスと笑い声が聞こえてきた。

「誰です?」
雪だるまは誰に聞くともなく尋ねた。

「ごめんなさい、あんまりにもおかしくって・・・」
その声は空から聞こえてきた。声の主は太陽だった。

「3尺ぐらいはあるのかしら、あなたは大きな雪だるまね」

「そうですか、僕は大きい方なのですね。よく知っていますね」

「ここにいて、ずっとこの世界を見てきたからね」

「太陽さんは物知りなんですね、私は何も知らなくて・・・
もっともっと、この世界の事が知りたいのです」

「そう。今のうちに得られるだけ得ればいいと思うわ」

雪だるまは、太陽と和やかに会話を交わした。

それからしばらくして太陽が真上に昇った時、異変が起きた。
自分の右手に刺してあった棒が崩れて下に落ちたのだ。
雪だるまは最初何が起こったのか分からなかった。
だが、すぐに理解した。自分の体が、溶け出している。
「た、太陽さん!?僕の体が小さくなっているんです。どういう事ですか?
太陽さんなら知っているんじゃないですか?」

太陽は静かに答えた。

「あなたは暖かくなると溶けてしまうの。あなたがいられるのは冬の間だけです。
春になる前に、あなたは溶けて消えてしまうでしょうね」

「消える?どういうことですか?」

「この世からいなくなってしまうと言う事。何も見えなく、感じなくなると言う事」

「あんまりだ!!」

雪だるまは、驚いた。
その怒りの声が自分の発した声だったからだ。

「あんまりじゃないですか、私が一体何をしたって言うんですか。
 何か悪い事をしましたか?誰かを傷つけたり悲しませたりしましたか?
 もうしばらくしたら消えてしまうなんて・・・」

「それが決まりだから」

太陽は素っ気なく答えた。

雪だるまはその答えに酷く失望した。

自分が消える・・・それも春になる前に。

雪だるまの中に生まれた小さな醜いものが、
とぐろを巻いて次第に大きくなった。

雪だるまは、憎んだ。
太陽を憎んだ。
そして何より自分を作り出した少女を、憎んだ。

続く

雪だるまの恋

物語
03 /07 2009
気がついたら、目の前は白銀の世界だった。
そして目の前には、一人の少女が立っていた。

体は動かなかった。いや、動かす術を知らなかった。
当初、自分が何者であるかが判然としなかった。
が、目の前にいる少女の話を聞く内に、
自分が「雪だるま」という存在であることを知った。

少女は私が目覚めた後、どこかへ去っていったが、
次の日にはまた戻ってきて、私に話しかけてきた。

私はだんまりを決め込むしかないのだが、
少女は独り言なのか、それとも話しかけているのか、
とにかくいろいろな事を話す。
私は、それをただ聞いている。
それが何度となく繰り返された。
私は少女の話により、この世界の輪郭を少しずつ知っていった。

ある日、少女はこんな話をした。

「このあたりにいっぱいある木はねー、桜の木って言うんだよー。
 桜って言うのはねー、花が咲いたら周りがピンクになって、
 すごい綺麗なんだよー。春になったら一面が桜でいっぱいになるの」

雪だるまは少女の言う桜というものにたいそう関心を持った。
そして一度見てみたいと思った。
春、というものになれば、桜が見られるらしい。

その後も少女は一日に一度訪れて、この世界のいろいろな話をした。
虫の話、電車の話、目玉焼きの話、雲の話・・・

そのうち雪だるまは少女が訪れるたびに、不思議な感覚に襲われた。
やすらぎにも似た、人懐かしい感情。
雪だるまにはその感情が何であるかを知らなかった。
その感情は人間で言うと恋というものだった。

雪だるまは、その少女に恋をした。

続く

けった

2017年はほどほどに